用語集

 

この用語集は、広島・長崎の被爆者に交付されている「被爆者健康手帳」に関するものです。

 

広島・長崎の原爆被爆者は「原爆被爆者援護法(正式名称・原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律)と、厚生労働省の「原子爆弾被爆者対策」によって、医療の給付などさまざまな援護を受けています。国が法律に基づき、毎年予算を決めて恒久的・安定的に運営しているため、ことに医療の面では恵まれた状況にあります。

 

福島の被ばく者が同等の保障を確保するためには、まず関連法案を作成し、国に法律の施行を求めることが重要です。

 

「福島に被ばく者手帳を作る会」では、今後の大きな課題として、法案作成に取り組んでいきたいと考えています。福島の現状を反映させ、被ばく者の救済がかなえられるような内容にしたい。そのためには、弁護士や医師、免疫学の専門家などの協力を得るとともに、国民の皆さん、ことに福島県民の皆さんの要望を汲み上げていく必要があります。

 

法案作成に向けて、多くの方々のご協力を心からお願いいたします。

 

原爆被爆者援護法

http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=3&H_NAME=&H_NAME_YOMI=%82%A0&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=06&H_NO_TYPE=2&H_FILE_NAME=H06HO117

 

厚生労働省「原子爆弾被爆者対策」

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/genbaku/index.html

 

被爆者とは

 

昭和20年8月に広島市と長崎市に投下された原子爆弾によって被害を受けた、被爆者(被爆者健康手帳所持者)の方々の数は平成26年3月31日現在、全国で19万2,719人となっています。  被爆者援護法に定める「被爆者」とは次のいずれかに該当する方で、被爆者健康手帳を所持している方をいいます。

 

1.直接被爆者

 

原子爆弾が投下された際、当時の地名で次の区域において、直接被爆した方。

 

<広島>

広島市内

安佐郡祇園町

安芸郡戸坂村のうち、狐爪木

安芸郡中山村のうち、中、落久保、北平原、西平原、寄田

安芸郡府中町のうち、茂陰北

 

<長崎>

長崎市内

西彼杵郡福田村のうち、大浦郷、小浦郷、本村郷、小江郷、小江原郷

西彼杵郡長与村のうち、高田郷、吉無田郷

 

2.入市者

 

原子爆弾が投下されてから2週間以内に、救援活動、医療活動、親族探し等のために、広島市内または長崎市内(爆心地から約2kmの区域内)に立ち入った方。

※広島にあっては昭和20年8月20日まで、長崎にあっては昭和20年8月23日まで。

 

3.救護、死体処理に当たった方等

 

原子爆弾が投下された際、又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった方。例えば、被災者の救護、死体の処理などをされた方。

 

4.胎児

 

上記の1から3に該当した方の胎児であった方。 ※長崎にあっては、昭和21年6月3日まで、広島にあっては、昭和21年5月31日までに生まれたかた。

 

 

被爆者健康手帳とは

 

上記「被爆者」にあてはまる方には、被爆者健康手帳が交付されています。被爆者が病気やけがなどで医者にかかりたいとき、この手帳を健康保険の被保険者証とともに、都道府県知事が指定した医療機関等にもっていけば、無料で診察、治療、投薬、入院等がうけられます。

 

 

医療の給付

 

医療の給付とは、病気やけがが治るまで、国の負担で医療をうけることができる制度をいいます。そして原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律にもとづき行われる医療の給付には、

(1) 一般疾病に対する医療の給付
(2) 認定疾病に対する医療の給付

の2つの制度があります。
医療の給付の範囲は、通院や入院して病気やけがの治療をうけたり、必要な処置をしてもらうことのほかに、次のようなこともふくまれます。

(1) 治療上使用するコルセット、義手、義足等について、その購入に要した費用
(2) 入院または転院治療が必要となったとき、歩くことができない、または人を雇って担架で運ばれたようなときは、乗物の運賃、人件費
(3) 訪問看護事業者・老人訪問看護事業者から訪問看護をうけたときは、その基本利用料
(4) 入院時の食事療養費

 

 

一般疾病に対する医療の給付


 この制度によって被爆者がいわゆる認定疾病以外の一般の病気やけがをして医者にかかる場合、都道府県知事が指定した医療機関等に行けば健康保険等の 患者負担分を負担しないで、医療をうけることができます。たとえば、医療保険により医者にかかった場合、通常は医療費および入院時の食事に要する費用の一 部を自分が負担しなければなりませんが、これが被爆者であれば、国が代わって支払ってくれます。
 なお、75歳以上等で高齢者の医療の確保に関する法律の医療をうける被爆者が、都道府県知事が指定した医療機関等の窓口に被保険者証と、被爆者健康 手帳を呈示して医療をうけた場合は、高齢者の医療の確保に関する法律の一部負担金を、また、入院時の食事の一部負担についても国が代わって支払ってくれま す。
 被爆者健康手帳を呈示しないで、または都道府県知事が指定した医療機関等以外で医療をうけた場合は、一部負担金を自分で支払うことになりますが、あとで都道府県知事に請求すれば払いもどしをうけることができます。
 請求のしかたは、医療機関等に支払ったときの領収書と医療の内容を記載した書類を申請書に添え居住地の都道府県知事(広島市、長崎市では市長を経由して)に申請書を提出することとなります。
 また、被爆者が、感染症法、精神保健福祉法などの法律によって、国または都道府県で医療の一部を給付されているときも、自己負担分を国が代わって支 払ってくれます。この一般疾病医療の給付をうけようとするときは、被爆者健康手帳と被保険者証をもって行かなければなりません。

 

認定疾病に対する医療の給付 


 厚生労働大臣の認定をうけた人は、その認定をうけた病気やけがについて、厚生労働大臣の指定した医療機関等で、全額国費をもって医療をうけることができます。
 なお、この場合には、認定書と被爆者健康手帳をもって行かなければなりません

 

本人が医者にかかった費用を支払った場合の取扱い


被爆者が認定疾病や一般疾病について医療をうける場合には、認定書や被爆者健康手帳を、指定をうけている医療機関等へ持参してみてもらうのが原則ですが、場合によってはそうでないこともあります。たとえば、

(1) けがや急病で緊急を要するので、または、付近に指定をうけている医療機関等が見当たらないので、やむを得ず指定をうけていない医療機関等へかつぎこまれたようなとき
(2) 緊急を要するなどやむを得ない理由で、認定書または被爆者健康手帳をもち合わせていなかったとき
(3) 指定をうけている医療機関等で医師の承認をうけて医師以外の者から特定の施術、たとえば、はり、灸、マッサージ等をうけたようなときは、一時本人が費用を支払い、あとでかかった経費を請求すれば、払いもどしをうけることができます。

 請求のしかたは、医療機関等に支払ったときの領収書と医療の内容を記載した書類を申請書に添え(12ページ参照)、居住地の都道府県知事(広島市、長崎市 では市長を経由して)に認定疾病医療費または一般疾病医療費の支給を申請してください。この場合、必ずしも医療機関等に支払った額が、全額払いもどされる のではなく、医療の内容を審査して、払いもどされます。

 

一般疾病に対する医療の給付をうけることのできない場合


被爆者が

(1)自分の故意の犯罪行為によって病気やけがをしたとき
(2)故意または重大な過失により病気やけがをしたとき
(3)けんかまたは泥酔など自分の不行跡によって病気やけがをしたとき
(4)医師の療養についての指示に理由なく従わなかったとき

 には、一般疾病医療の全部または一部の給付をうけることができません。
 また、このほか、

(1)遺伝性の病気
(2)先天性の病気
(3)被爆以前にかかった精神病
(4)かるいむし歯

 は、原子爆弾の放射線との関連がないので、一般疾病医療の給付をうけることはできません。
 なお、認定をうけている病気やけがについては、認定疾病に対する医療の給付が行われておりますので、一般疾病医療の給付からは除外されております。